この度、東京都染色補正しみぬき組合の理事長を拝命致しました小林と申します。
当組合は、日本の伝統文化である着物を中心として、アパレル、小物、絨毯に至るまでの、お直し、お手入れを手助けする職人の集りでございます。
お直し、お手入れは、汚れ・食べこぼし・カビなどのしみぬきを始めとし、しみぬき時における色抜け・黄変・色焼け・染料シミなどの修復をする染色補正など、新しい物から古い商品まで、多種多様にわたっております。
ある方が、「染色補正という仕事は医学であり、その1人1人は医者であり、多くの知識と高度な技術によって病を治す総合病院である」と言っておられました。まさにその通りで、そう言って下さり、嬉しい限りです。
昭和46年に労働省(現在の厚生労働省)認定の国家検定制度が発足して以来、多くの1級・2級染色技能士が誕生しており、当組合も検定に協力させて頂いております。
組合には、東京を中心に関東一円、遠くは山形・青森からも入会されておられます。
そのほとんどが国家検定1級の資格を持ち、現在隔年で行われております厚生労働省、中央職業能力開発協会及び一般社団法人全国技能士会連合会主催による「技能グランプリ」に、各県代表として出場して、技を競い合っております。
また、組合と致しましては、年に数回、機関紙「補正組合だより」を発行して、業界情報・新薬情報など、少しでもお役に立つ情報をお知らせしております。
当組合におきましても、伝統工芸産業が抱える後継者不足、ハケ・筆などの良質な道具の入手困難など、問題はございますが、職人1人1人が技術の向上、技の伝承に励み"染色補正しみぬき"が後世に残りますよう、努めて参りたいと思っております。
しみぬきでお困りの際は、当組合所属の店にご相談賜りますれば、ご要望にお応えさせて頂けるのではと考えております。ただし、組合員の中には、一般のお客様をお受けしていないお店など、各店の営業方針がございますこと、ご承知置き頂きたく存じます。
今後とも、東京都染色補正しみぬき組合を、よろしくお願い申し上げます。
東京都染色補正しみぬき組合理事長
小林 一通
江戸時代より約三百年の間、伝え続けられている染色補正業の技術があります。現在のような、石油系の溶剤、化学薬品や洗剤等が無い時代に、先人の知恵で自然の中から色々な物を利用、応用して染み抜きを行なっていたようです。
昭和四十二年、当時の労働省より染色補正業と命名され、昭和四十七年より、一級二級技能検定試験が新設されました。その後、昭和五十年全国染色補正連合会が結成されました。昭和五十七年第一回技能グランプリより、毎回一級技能士が多数参加して、現在に至っています。